あいそめクリニック

漢方クリニックのグラフィックデザイン / 内装設計

Year
2020
Program
clinic
Status
Completed

Intro

かつての藍染川のたもとで

「いつかこの街で漢方クリニックを開業したかったんです。」
そんな言葉とともに中西さんからお声がけいただいたのが2019年の冬でした。中西さんとわたしたちはHAGI STUDIOが運営する「まちの教室」KLASSに息子さんとともに通ってくださって以来のお付き合い。楽しく書道を続けてくれていた息子さんのお母さんとしての中西さんから、こういうかたちでお話をいただいたのは少し意外でした。中西さんはお住まいも近くにおかれていますが、谷根千エリアが本当に好きで、自分が開業するならこの地域と、決めていたそうです。

 

Back ground

「生活を包む」漢方クリニック

中西さんは西洋医学の知識も備えた心療内科医でもあるわけですが、開業を目指しているのは「漢方クリニック」。わたしたちは正直漢方クリニックの診療をうけたことがなかったため、まず漢方とはなにか、西洋医学との違い・共通点などを伺うことからはじめました。そんなお話の中で浮かんできたのが、「生活を包む漢方クリニック」という考え方。
病院やクリニックに通院することって、どうしても少しネガティブというか、「治療しに行く」という感じがすると思うのですが、漢方の場合、即効性のある治療よりももっと根本的な心身の調整のように思えました。薬も自然由来の成分でできていますので、付き合い続けられる自分にあった漢方との出会いを見つける場、とも言えます。そんな関係性を結びつけることができる空間とはどのようなものでしょうか?

 

Process

はじめ中西さんにご依頼いただいたのは、グラフィックデザインとWEBデザインのご依頼でした。しかし、クリニックで過ごす時間の質や、体験が伴って初めてロゴイメージとの一体感が生まれるという思いから、空間のデザインも担わせていただくことを一緒にご提案しました。クリニックという特殊な用途であることから、ある程度決まった設えを提供する設計施工会社に依頼するつもりだったとのことですが、設計が分離することによる施工内容・費用の管理によるメリットにもご理解いただき、最終的には空間も含む全体のデザインをご依頼いただきました。
繊細な造作家具が多いデザインとなったため、施工は「hanare」や「くらうましもきた」「神宮前のオフィス」を手掛けてくれた元家具職人でもあるTRUNKの松本亮さんにお願いすることなりました。

Output

ロゴデザインと館内サイン

クリニックを象徴するロゴデザインは、「生活を包む」というクリニック全体のコンセプトにもとづき、漢方の生薬のひとつである桂皮の花と、それを包む薬包紙をあしらったものになりました。薬包紙の輪郭線はあえて手書きで揺らいだ線とし、何度も検討した線から選び取ったうえで決定しました。生薬のイラストは桂皮の花以外にも作成し、WEBなどで生薬の紹介をするのにも使われています。通りに面した窓につけるサインにはこれらのイラストが使われ、漢方クリニックであることをさりげなく街に伝えています。

診察室からトイレのサインに至るまで統一したサイン計画とし、施設全体で違和感なく過ごせるように配慮しました。メインとなる入口正面のサインは、アクリル板の裏面の塗装と表面のカッティングシートによる仕様とし、僅かな厚みのなかでの立体感を生み出しました。

遊び心のあるショップツール

配布系ショップツールは、ショップカード・診察券・A4リーフレットをご用意しました。
なかでもショップカードは薬包紙の折り方に沿った点線があしらわれ、順番通りに折っていくことでだれでも薬包紙が折れるようになっています。
https://youtu.be/PIezeCcFaC8

WEBサイト

WEBサイトはIRORIの細田佑介さんにご協力いただきながら、「生活を包む」というデザインコンセプトと、中西院長の温和な人柄を伝えるためのレイアウトやモーションの表現としました。「漢方のおはなし」というコーナーを作ることで、初めての方にも漢方を身近に感じていただけるように工夫しています。
写真はわたしたちの施設の多くも撮影してくれている、馮 意欣さんにお願いしています。
馮さんの写真はいつも、ふとした日常の瞬間を絶妙な空気感とともに伝えてくれます。

あいそめクリニックWebサイト https://yanesen-kampo.jp/

自分のこころとからだに向き合う待合室

通いたくなるクリニック、通うことが自分の生活を整える習慣となるようなクリニックの待合室はどうあるべきか。ここでは来院者それぞれが自分の時間を過ごせる待合室とすることにしました。
入り口のドアを開けると、まず来院者はベンチに座って履物を脱ぎます。受付カウンターで問診は基本的にWEB上で事前に行われているため、スムーズに手続きを済ませます。
受付カウンターには、漢方茶のセットが用意され楽しむことができます。
お茶をもって待合席に座ると、院長おすすめの文庫本が用意されており、お茶と本を置くために設えられた小さなテーブルと、自分のこころとからだに向き合うことができるちょっとした仕切りに包まれ、日常から少し離れた体験を味わうことができます。

光のうつろいとともに心身ともにリラックスできる診察室

診察室は通りに面した側の一室に設けました。クリニックの診察室って一般的に専門の機材が並んでいて、とにかく真っ白な空間で少し緊張しませんか?ここでは、風にゆれるカーテンや、暖かい光とともに発光するペンダントライトなどによって、なるべく来院者にリラックスしていただく工夫をしています。ダイニングテーブルのような診察台に横並びで座ることで、院長先生と患者さんがフラットな関係性を結べるように意図しました。

 


Member

Visual Portfolio, Posts & Image Gallery for WordPress

 

 


プロジェクトメンバーの声

開業にあたって、一番重視したのは、立地と雰囲気です。「開業するなら谷根千で」という気持ちはもともと固まっていたので、雰囲気も「谷根千の風景に自然になじむもの」でありたいと考えていました。とはいえ、当初はクリニック専門の業者さんにお願いするのかな思っていました。でも、それではごく普通の小ぎれいなクリニックになってしまう気がして、「谷根千にすんなりとなじむ佇まいにするにはどうしたら良いか」と悩むうち、ふと「HAGI STUDIOさんは?」と思いつき、ご連絡したのが始まりでした。
HAGI STUDIOさんは、地域にもともとあった建物を上手に活かしていらっしゃる印象があったので、谷根千らしい雰囲気・・・と考えたときにまず思い浮かびました。でも、こんな小さなクリニックの・・・と気後れもしてしまい、遠慮がちにご相談をしてみました。すると、思いのほか良いお返事を頂けて、さらに詳しくお話する中で、内装設計も含めてトータルでお願いすることに決めました。
はじめに、手渡された「カルテ」に希望やイメージなど記入しながら、本当に好きなもの、大事にしたいことを再確認しつつ、その後の打ち合わせでは、私の漠然とした思いや拙い説明から意図を本当によく汲み取ってくださり、こちらが思いつかないようないろいろな提案をしてくださったので、毎回の打ち合わせがとても楽しみでした。
 実は、クリニック入居にあたってさまざまな要件が課せられることになり、一時は他の場所を考えなければいけないかもしれないというようなピンチがあったり、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化していき、近所しか出歩けないような状況になったりして、弱気になってしまうことも何度もありましたが、皆さんのサポートや、真摯なお仕事ぶりに心を打たれ、こちらも元気を頂き、前に進むことができました。
 開業して早4か月が過ぎましたが、今では、クリニックの空間やデザインの一つ一つがとても愛着のあるものになりました。ずっと大事にしながら、地域の方々に愛されるクリニックを目指して努力していきたいと思っています。


あいそめクリニック院長 中西 幸子

クリニックを開業するお手伝いをさせていただきました。
開業を谷根千でお考えだったため、谷中に縁があるHAGI STUDIOにお声がけいただきました。クリニックと一番長くお付き合いされるのは中西さんです。
そのため、中西さんご自身が心地よく過ごせることを第一に考えつつ、来院した方が安心感や信頼感を感じていただけるようなデザインを、内装を含めご提案させていただきました。
お話をさせていただく中で、クリニック然としたデザインよりも、デザイン性の高いものの方がいいのではないかと思いました。
そこで「生活を包む」というコンセプトを念頭に、漢方から薬包紙を連想しそこに桂皮の花を包みました。谷中の街に馴染むよう、柔らかくそっと寄り添うようなロゴデザインにしました。
外看板は、よみせ通りに馴染むこと、それでいてきちんと看板の役割が果たせることを意識し、景観を損なわないように生薬のイラストを大きく配置して目につくようにしました。夕方のよみせ通りを歩く時、カーテン越しにクリニックの灯りが点いているのを見ると、ほっと気持ちが和らぎます。
HAGI STUDIO グラフィックデザイナー 上原 凛

Outline

概要
期間:2019年12月〜2020年5月
・内装設計
・ロゴデザイン
・WEBデザイン

設計概要
竣工:2020年5月
場所:東京都文京区千駄木
用途:クリニック
種別:リノベーション
面積:77.04㎡

体制
クライアント:中西 幸子(あいそめクリニック院長)
ディレクション/設計:宮崎 晃吉(HAGI STUDIO)
グラフィックデザイン:上原 凛(HAGI STUDIO)
設計担当:児林 幸輔(HAGI STUDIO)
WEBデザイン:細田 佑介(IRORI)
写真:馮 意欣
施工:松本 亮(TRUNK)